おもちの日記

不妊治療の振り返り、現在の育児のこと、趣味のことを綴ります

不妊治療23:昇進

3つ目のクリニックの初採卵で得た受精卵が胚盤胞まで育たなかったため、そのまま次の周期でも採卵に臨むことになりました。通算では5回目の採卵になります。前周期で行ったERA検査の結果が出るまでには時間がかかり、この周期の移植に間に合うかどうか、というところでした。
 
ちょうど年度が変わり、私の仕事の環境だけでなく、気持ちにも変化があった頃でした。

一つは、管理職に昇進したことです。私の勤め先では、管理職になるには、筆記試験と面接をパスする必要があります。筆記試験は、前の年に胚盤胞移植や激務の合間をぬって、なんとかパスしていました。筆記試験では、自分の開発している製品に関する事業の将来のビジョンを文章で語らなければいけないのですが、これに大変苦労しました。来年の今頃は、育休で会社にいない状態が理想なのです。その頃に事業がどうなっていようが知ったこっちゃない!、、、とまでは言いませんが、真剣に深く考えられるほど自分ごとにするのが難しかったです。結局、3回移植をして、凍結胚盤胞の残りがなくなりしばらく治療を休むことになって、ようやく腰を据えてまともに考えられるようになりました。
面接はその1年後、1回目の転院後初の採卵、移植が不発に終わり、絶望しかかっていた頃にありました。面接でも同様に将来を語るのですが、この頃にはだいぶ落ち着いて、自分のこととは切り離して考えられるようになっており、(1年前の筆記試験で一旦解を出していることとはいえ、)我ながら少し成長を感じることができました。治療が全くうまくいかず、妊娠できるビジョンも持てなくなっていたので、事業のことを考えるには都合がよかったのかもしれません。ともかく面接試験もパスすることができました。
それにしても、急な早退、休暇をこんなに繰り返す社員を管理職にするなんて、具体的に誰が人事権を持っているのかわからいませんが、一体何を考えているのでしょうか?女性管理職を増やす必要があり、筆記試験の成績のよかった私を早く昇進させてしまわねば、とでも考えたのでしょうか?不妊治療だけのせいではありませんが、それでも治療を始めてからは、プロジェクトを炎上させ、成果も出せていなかったのに、自分が不思議に思うくらいだから、周りも納得しないだろうなあと不安に思いました。とはいえ、昇進するかどうかを決めるのは私ではありません。私は全力で試験に挑み、パスしただけですから、開き直ることにしました。

もう一つ自分の変化を感じたのは、期初の上司との面談でした。治療を始める際、その旨報告したときは、私の人生において大事なことだから、と言って背中を押してくれた上司でしたが、それから2年ほど経った今、どう思われているのか気になっていました。そこで、なぜか私は苦肉の策として、「婚活のようなものだと思って生暖かく見守っていてください」、とお願いしたのを覚えています。

私の職場の後輩で、長い間婚活に励んでいる男性社員がおり、いつも面白おかしく婚活の様子を話してくれていました。1年半前、繁忙期にもかかわらず、私が2回目、3回目の移植にせっせと取り組んでプロジェクトを炎上させたときに、激しくののしってくれた人物です。今でも100%心を許す気にはなれませんが、かといって婚活に失敗して不幸になれ、とは思いません。同じ職場の同僚としては、うまくいってくれれば、心が満たされて精神が安定して仕事にも良い影響が出るといいなと思います。昨年度からプロジェクトも落ち着き、彼自身も業務量をコントロールしながら、婚活のために休暇等を取得できるようになっていました。

私の不妊治療も、他人から見れば、彼の婚活と同じようなものかもしれない、と思うようになりました。そのために仕事に大幅に差し支えるようでは困るが、知人の一人として、うまくいけばよいと思う、という点は同じであるように思いました。

上司にそのようにお伝えしたところ、返ってきたのは意外な返答でした。上司も実は不妊治療中であり、先日はじめて体外受精にチャレンジしたところだということを明かしてくださいました。大変であることはよくわかると言ってくださり、とても心強く感じたのを覚えています。

 

以上のような事情があり、この頃は、それまでに比べれば大分心にゆとりをもって顕微授精に臨むことができていたと思います。